設立趣旨(背景と目的)
プラスチックは、軽量、高耐久性、良好な加工性、低コストなどの特長を有し、日用品、衣類、家電、建材、輸送機器、農業、漁業など幅広い分野に活用され、豊かな人類の生活の実現に大きく貢献してきました。一方で、地球温暖化、プラスチックごみの問題が深刻化するに伴い、プラスチックの位置づけは大きく変わりつつあります。プラスチックの原料は石油であり、プラスチックを焼却処分することでCO2が大気中に排出され、地球温暖化の加速要因となりえます。また、適切に処理されないプラスチック廃棄物は、環境汚損の原因となり、生態系にも悪影響を及ぼします。
特に、海洋プラスチックごみは昨今、世界的な課題として注目されています。それらは、海を汚染するだけでなく、海洋生物が食することで、海洋生物の健康にも影響を与えています。また、微小サイズで製造されるプラスチックあるいは海洋プラスチックが分解されて生成されるマイクロプラスチックは、海洋生物を介して人体に取り込まれ、人の健康にも悪影響を及ぼす懸念が持たれています。
現在、プラスチックに係る諸問題の解決に向けて、国際機関、各国で各種規制が制定され、様々な形の取り組みが推進されています。対策は3R(Reduce、Reuse、Recycle)を基本としつつ、代替品の使用や生分解性プラスチックの開発にも拡がりをみせつつあります。一方で、上記問題の根本的解決には、個々の対策だけでなく、全体最適を見通した対策が必要であり、原料供給者、プラスチック製造者、プラスチックの産業利用者、プラスチックの回収・処理・リユース・リサイクルに係る関係者、政府・自治体関係者など様々な利害関係者の英知の結集が必須です。プラスチックの利便性を考慮すると、人類の生活の中からプラスチックを無くすことは現実的な選択肢ではなく、地球温暖化、プラスチックごみといった諸問題を解決しつつ、持続可能なプラスチックの活用を可能とする「プラスチックマネジメントの未来像」を想定し、その実現に向けた活動を興すことが重要と考えられます。加えて、この様な活動は、500兆円という巨大産業である石油化学産業を新たな形態の産業へ転換するイノベーションの起爆剤となりえます。
上記の背景を踏まえ、本研究会では、プラスチックに係る諸問題を様々な専門分野から検討することで、全体像を俯瞰しつつ、諸問題の根本的解決に向けた方策の立案と持続可能なプラスチックの活用を可能とする「プラスチックマネジメントの未来像」の想定に向けた議論の活性化、及び、その実現に必要なネットワークの構築を目指します。加えて、本研究会を通して、「ムーンショット型研究開発事業:地球環境の再生に向けた持続可能な資源循環を実現/光スイッチ型海洋分解性の可食プラスチックの開発研究」の成果の広報、及び、数年後に結成予定であるコンソーシアムに参画する企業/団体の募集に繋げることを目的としています。